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ペンタゴン報告は、イスラム教徒反政府勢力への西側支援が、ISISを作り出すと予測した 2015.05.22

最終更新日:2018.03.22


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[元記事]
Pentagon report predicted West’s support for Islamist rebels would create ISIS
by Nafeez Ahmed, May 22, 2015
URL:https://medium.com/insurge-intelligence/secret-pentagon-report-reveals-west-saw-isis-as-strategic-asset-b99ad7a29092

[著者]
Nafeez Ahmed 博士
調査ジャーナリスト、ベストセラー作家であり、 国際的な安全保障の学者です。元ガーディアンの作家で、Middle East Eyeのコラムニストでもあります。




保守的な公益法律事務所の司法監視(Judicial Watch)が入手した機密解除された秘密の米国政府文書[注2]は、 西側政府が意図的に、シリア独裁者バシール・アサドを打倒するために、 アルカイダや他のイスラム過激派グループと同盟したことを示している。

この文書は、湾岸諸国、トルコと協力して、西側は意図的に、アサドを不安定化させるために 暴力的イスラム主義グループを支援したこと、そしてこれらの勢力はシリア政権を孤立化させるために、 シリアにサラフィー主義[注3]国家の出現を望んでいたことを暴露している。

新たに機密解除された米国の文書によると、ペンタゴンはこの戦略の直接的な結果としてイスラム国家の台頭を予測し、 イラクを不安定化する可能性があると警告した。西側、湾岸諸国、トルコのシリア反政府勢力 (イラクのアルカイダを含む)への支援が、イラクとシリアでイスラム国(ISIS)の出現に つながる可能性を予測していたにもかかわらず、 この文書にはシリアの反政府勢力を支援する方針を止めるいかなる決定の兆候も見られない。 それどころかサラフィー主義[注3]王国と提携するアルカイダの出現は、 アサドを孤立化させる戦略的機会として説明されている。

偽善(Hypocrisy)
この暴露は、西側諸国政府の公式のシリア政策と矛盾しており、暴力的過激派への西側の秘密支援に対して困惑する疑問を引き起こす。 一方では、増大するテロの脅威を使って、過剰な大量監視と市民の自由の取り締まりを正当化している。

連邦訴訟により司法監視(Judicial Watch)が入手し、今週初めに公表された一連の文書の中で、 米国防情報局(DIA)文書[注2]は、2012年8月12日付けで機密に分類されている。

DIAは米国防総省、情報機関に対し、計画立案者、政策立案者、作戦を支援する軍事情報を提供する。

これまでのところ、メディア報道は、オバマ政権がリビアのテロリスト拠点から、 シリア反政府勢力へ武器を供給していたことを知っていた証拠に焦点を当てている。

いくつかの報道機関は、米国諜報機関内部ではISISの台頭を予測したと報告している。 しかし、西側が意図的にどのようにして、シリアでアルカイダが主導する反乱を育成してきたかを 暴露する詳細を正確に知っている者はいない。

チャールズ・ショーブリッジ(前英陸軍、首都警察のテロ情報担当官)は、次のように言っている。

「これらの文書を入手した組織の政治的傾向を考えれば、それまでの主な重点は、 ヒラリー・クリントンが2012年にベンガジの米国領事館に対する攻撃について何を知らされていたか 、を問い詰めることだったのは至極当然である。 しかし、この文書はほとんど公開されていない暴露も含んでいる。 それは、西側諸国政府とメディアがシリアの反政府勢力を支持してきたという重大な疑問を引き起こしている。」


西側のイスラム教徒(The West’s Islamists)
2012年の新たに機密解除されたDIA 文書は、今回の反アサド反乱軍の主な構成は、 ISISの出現につながるグループと提携するイスラム反乱軍だったことが証明されている。 それにもかかわらず、これらのグループは西側の軍とその地域の同盟国から支援を受け続けた。

「サラフィスト[注3]、ムスリム同胞団、イラクのアルカイダがシリア反乱軍の主要な勢力である」 ことに注意。文書は、「西側諸国、湾岸諸国、トルコが反政府勢力を支持し」、一方、ロシア、中国、イランは 「アサド政権を支持している」と述べている。

7ページのDIA文書によると、イラクのアルカイダ、イラクのイスラム国(ISI)の前身が、 シリアの反政府勢力を最初からイデオロギーとメディアで支援してきた。 なおイラクのイスラム国(ISI)は、後にイラクとシリアのイスラム国(ISIS)になった。

以前の秘密のペンタゴン報告書によると、「シリアでの反乱軍の台頭」は、 スンニ派の地域の「宗教的・部族的勢力」から多様な支援を受ける「宗派的傾向」をますます強めている。

DIA報告書は、「危機の将来の前提」というタイトルの節で、アサド政権がシリアの領土の支配権を維持する一方、 危機は引き続き「代理戦争」にまで拡大すると予測している。

この文書はまた、国際的な避難所を作ることを勧告している。 それは、ベンガジが臨時政府の指揮センターに選ばれたときにリビアで発生したことと同様である。

リビアでは、反カダフィ反乱軍、その多くはアルカイダと提携する軍はNATOの安全な避難所 (別名、飛行禁止区域)によって保護されていた。

支援勢力はISIS実体を望まない(‘Supporting powers want’ ISIS entity)
目立って先見の明がある予測では、ペンタゴン文書は、「イラクとシリアの他のテロ組織が連合するイスラム国」 を明示的に予測している。

それにもかかわらず、「西側諸国、湾岸諸国、トルコは、これらの企てを支援しており」、 シリアの「反政府勢力」は「イラク西部諸州(モスルとアンバー)に隣接する シリア東部地域(ハサカとデリゾール)を支配」するために戦っている。

…シリア東部(ハサカとデリゾール)に、宣言されたもしくは宣言されないサラフィスト王国[注3]を建設する可能性がある。 これはまさに、支援勢力が望んでいることで反政府勢力にシリア政権を孤立化させることである。 それはシーア派の拡張(イラクとイランへ)の戦略的縦深性を考慮(敵対)してのことである。

秘密のペンタゴン文書は、異常なことを証明している。 現在ISISと戦っている米国主導の連合が、3年前にその地域に過激派の「サラフィスト王国」が出現することを歓迎していた。 それはアサドを弱体化し、イランの戦略的拡大を阻止する方法としてである。 イラクはこの「シーアの拡大」に決定的な要素であると指摘されている。


シリア東部でこのような「サラフィスト王国」が樹立されることは、DIAの文書によれば、 「シリア反政府勢力への支援勢力が望んでいる」ことであると正確に示している。 これに先立ち、文書は、「西側、湾岸諸国、トルコ」が支援勢力であると繰り返し述べている。

さらに、この文書は、ペンタゴンの分析官が、事前検討もないこの戦略の悲惨な危険性を鋭く認識していたことを暴露している。

シリア東部でこのような「サラフィスト王国」が樹立されると、AQI(イラクのアルカイダ)が モスルとラマディの古い地区へ戻る理想的な環境を作り出すだろうと言っている。 昨年夏、ISISはイラクでモスルを征服した。そして今月はラマディも支配した。

そのような疑似国家は以下のものを提供する:

「..スンニ派イラクとシリアの聖戦の統一を見込む新勢力と、 アラブ世界の他のスンニ派のISI(イラクのイスラム国)は、 イラクとシリアの他のテロ組織との連合を通じてイスラム国家を宣言することができ、 イラク統一と領土の保全に関して重大な危険をもたらすだろう。」


2012年のDIA文書は、諜報情報レポート(IIR)であり、「最終的に査定された諜報」評価ではなく、 内容は配布前に審査される。報告書は、国務省、中央司令部、国土安全保障省、 CIA、FBIなど他の機関にも含め、米国諜報機関で回覧された。

この戦略に関する私の質問に応えて、英国政府は、ペンタゴン報告書の驚くべき暴露を簡単に否定した。 その暴露とは、シリアでの暴力的な過激派に対する西側の意図的な援助である。

英国外務省の広報担当者は、次のように述べた:

「AQとISILは追放されたテロ組織です。英国はあらゆる形のテロに反対しています。 AQ、ISILおよびその関連組織は、英国の国家安全保障に直接的な脅威をもたらします。 我々は、イラクとシリアでISILを打ち負かす軍事・政治連合の一員であり、 AQやその地域の他のテロ組織からの脅威に対抗するために国際的なパートナーと協力しています。 シリアでは、アサドの専制と過激派の残虐行為に反対する穏健派反政府グループを常に支援してきました。」


DIAはコメントの要請には応じなかった。

政権交代のための戦略的資産(Strategic asset for regime-change)
安全保障分析官のシューブリッジ氏は、しかし、戦争開始以来、シリアのイスラム・テロリストに対する 西側の支援を追跡してきたが、秘密のペンタゴン諜報報告書は公式の声明の核心に致命的な矛盾があることを指摘した。

「シリア危機の初期には、米国と英国の政府、そしてほとんど一般的に西側の主流メディアが、 シリアの反政府勢力は穏健、自由主義的、世俗的、民主的で、それゆえ西側諸国の支持に値すると宣伝してきた。 これらの文書はこの評価を完全に無効にしている。西側のメディアは、非常に重要にも拘わらず、 それら事をほとんど完全に無視してきたことは重大である。」


イラク戦争の初期に任務に就き、2000年から2004年にヴァージニア州の訓練所(Quantico)の 海兵隊本部大隊で9/11の初期対応者だった元米海兵隊員ブラッド・ホフ(Brad Hoff)によると、 初めてリリースされたペンタゴンの報告は、次のように驚くべき断言をしている:

米情報機関は、イラクとレバント(ISILまたはISIS)でのイスラム国家の台頭を予測したが、 グループを敵として明確に説明する代わりに、そのテログループを米国の戦略的資産と見なしている。


ホフ氏はレバント・レポートを通じて話を公表した。 それは中東で直接の経験を持つテキサス拠点の教育者が運営するオンライン出版物である。 ホフ氏は、DIAの文書は、当然のことのように、この地域の過激派サラフィスト[注3]の台頭が、 シリアの政権交代のための道具になると言っている点を指摘している。

DIA諜報報告は、ISISの台頭は、シリア内戦により可能になったとしている。 「米軍のイラクからの撤退はイスラム国家の台頭の触媒として作用し、 無数の政治家および専門家の論点になっていることには、全く触れていない」と彼は書いている。

報告書は次のことを明らかにしている:

東シリアでのサラフィスト王国の樹立は、正確に、反政府勢力を支援する外部勢力が、 アサド政府を弱体化させるために(西側、湾岸諸国、トルコが)望んでいるものである。


イラクに拡大し、その国を破壊する可能性のあるサラフィストの疑似国家主体の台頭は、 米国の諜報機関によって明確に予見されていたが、西側の「シリアを孤立化させる」方針のため、 戦略的に有用と見なされた。

共謀(Complicity)
この地域の米国主導戦略に対する批判者は、次の点について繰り返し疑問を投げかけている。 それは、シリアでアサド政権を不安定化させるためにイスラム主義テロリスト・グループに それは、シリアのアサド政権を不安定化するためにイスラム主義テロリストグループに 意図的に大規模な支援を与える連合同盟の役割についてである。

伝統的な見識では、米国政府が反アサド反政府勢力への資金援助を十分に監視していなかった。 それは、穏健なグループのみを支援することを保障するために、 監視され入念にチェックされていると想定していた。

しかし、新たに機密解除されたペンタゴンの報告書は、ISISがイラクに対して攻撃を開始する数年前に、 米諜報機関はイスラム過激派がシリアの宗教反乱の中核であることを完全に認識していた。

それにもかかわらず、ペンタゴンは、シリアとイラクで過激なサラフィ主義[注3]が 拠点を確立する可能性を予想していながら、イスラム教徒の反乱を引き続き支援した。

シューブリッジ氏は、「文書は、米国政府は2012年8月までに、過激主義の真の性質と、 シリアの反乱の起こり得る結果を知っていたことを示している」。すなわちISISの出現である。 「しかし、これは米国外交には有益と考えられた。これはまた、次のことも示唆している。 西側の国民を意図的に欺く努力に何年も費やした決定、従順なメディアを使い、 シリアの反乱が圧倒的に穏健であると信じ込ませたこと」。

アニー・マカンはこの暴露について同様に言っている。 彼女は、元MI5情報諜報官で、1990年代に、前リーダーのカダフィ大佐を暗殺するために、 MI6がアルカイダに資金援助したことを告発した:

「これは私には驚きではありません。各々の国には、常に複数の諜報機関があり、競合する政策議題を持っています」。


彼女は、1996年にMI6が実行したリビア作戦が、無実の人々の死を招いたことを説明した。 「MI5がアルカイダを調査するため新しい部署を準備していた時期に起きました。」

この戦略は、2011年のNATOのリビアへの介入で大規模に繰り返されたとマカンは述べている。
そこでCIAとMI6は:

「...まさに同じリビアのグループを支援し、州の崩壊、大量殺人、転覆、無秩序を招いた。 したがってNATOをもう一度「介入」させる試みが失敗した後、アメリカの軍事安全保障複合体の分子が ISISの発展させたという考えは、確立されたパターンの一部です。 そして、そのようなゲームの結果として起きる膨大な規模の人間の苦しみには無関心です」。


分割統治(Divide and rule)
何人かの米国政府関係者は、反ISIS連合の最も緊密な同盟が、ISISに合流した 暴力的イスラム過激派グループに資金提供していたことを認めている。

例えば、ジョー・バイデン米副大統領は、昨年、サウジアラビア、アラブ首長国連邦、 カタール、トルコが、シリアのイスラム反乱軍に何億ドルも拠出したと認めた。反乱軍はISISへと変身した。

しかし、彼はこのペンタゴン内部文書が暴露していることを認めなかった。 極秘戦略全体が米国、英国、フランス、イスラエルおよび他の西側諸国によって許可され 監督されたという事をである。

この戦略は、最近の米国陸軍が委託したRAND Corpの報告書の政策シナリオに一致しているように見える。

DIA文書公開の4年前に発行されたこの報告書は、米国に対し次のことを呼びかけている。 「断固として保守的なスンニ派政権の側に立ち、シーア派とスンニ派の紛争を活用すること。 そしてイスラム世界のシーア派のすべての権利回復運動に敵対して、彼ら(保守的なスンニ派)と一緒に働くこと」。

米国は、「サウジアラビア、エジプト、パキスタンの伝統的なスンニ派政権を支援する」ことによって、 湾岸で「イランの力と影響力」を封じ込める必要がある。 同時に米国は、「イラクのシーア派政権との強力な戦略的関係」を維持する。 イラクのシーア派政権とイランとの同盟があったとしてもである。

RANDの報告書は、「聖戦主義陣営の部隊を創設する」ための「分割統治」戦略がすでに展開されていることを証明した。 「今日のイラクでは、戦略は戦術的なレベルで使われている。」

この報告書は、米国がアルカイダ系列の「民族主義的な反政府勢力」と「一時的な提携」を結んでいることを証明した。 その勢力は「武器と現金」の形をとって4年間米国と戦った。これらの民族主義者は「米軍に敵対してアルカイダと協力した」が、 彼らは現在、「アルカイダが両陣営に与える共通の脅威を」利用するために支持されている。

しかし、2012年のDIAの文書によると、アルカイダに敵対するためにイラクの元アルカイダ武装勢力を支援しながら、 西側諸国政府は同時にシリアでアルカイダ反乱軍を武装していた。

米国の諜報機関の文書によれば、米国主導の連合が、建前上は今日、イスラム国(ISIS)と戦っているが、 最初は意図的にISISを創設した。このことは、反テロ勢力の強化を正当化しようとする 最近の政府の活動について厄介な疑問を提起する。

ISISの台頭に伴い、大規模監視、オルウェリアン(ジョージ・オウエル主義)の「義務の防止」、 さらには放送局に対する政府の検閲を可能にする計画さえ含め、 過激派と戦うために人権侵害の新たな措置が大西洋の両側で進められている。 その多くは偏っており、活動家、ジャーナリスト、少数民族、特にイスラム教徒をターゲットにしている。

しかし、新たなペンタゴンの報告書は、西側諸国の主張とは対照的に、脅威の主な原因は、 深刻に誤った政策の結果であることを示している。それは、疑わしい地政学な目的のために、 イスラム主義テロリズムを秘密裏に支援する政策である。


[訳者注]
[注1]同様なタイトルの記事、同じテーマを扱った記事が多数あるが、本記事が公開された最初の記事である。

[注2]米国防情報局(DIA)文書(US Defense Intelligence Agency (DIA) document)
URL:http://www.judicialwatch.org/wp-content/uploads/2015/05/Pg.-291-Pgs.-287-293-JW-v-DOD-and-State-14-812-DOD-Release-2015-04-10-final-version11.pdf

[注3]サラフィー主義 Wiki参照。主なサラフィー主義政党を持つ国として、エジプト、チュニジア、イエメンが挙げられている。しかし現在では、サウジアラビアのワッハーブ派が主導的である。