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アメリカの持続不可能な帝国 Pat Buchanan 2018.04.24

最終更新日:2018.05.03


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[元記事]
America's Unsustainable Empire
Pat Buchanan April 24, 2018, The Unz Review
URL:http://www.unz.com/pbuchanan/americas-unsustainable-empire/

[著者]
パトリック J. ブキャナン(Patrick J.Buchanan)
アメリカ合衆国の政治コメンテーター・作家・シンジゲート誌のコラムニスト、政治家、ニュースキャスター。
リチャード・ニクソンやジェラルド・フォード、ロナルド・レーガンなど大統領のシニアアドバイザーや、 CNNでCrossfireの初代司会者を務め、1992年と1996年のアメリカ合衆国大統領選に共和党から立候補し、 2000年アメリカ合衆国大統領選挙でアメリカ合衆国改革党から票を獲得した。



トランプ大統領がイランの核合意を廃棄する前に、金正恩(キム・ジョンウンと同じ取引を交渉できるならば、 世界を驚かせ、ノーベル平和賞を獲得するだろうと考えているかもしれない。

イランには核爆弾もICBMもなく、決してテストしていない。濃縮ウランを爆弾の品質に高めたこともない。 ウランの98%を国外に輸出した。内部にカメラを設置してあり、検査官は核施設全体を調べ回っている。

そして北朝鮮? 原子爆弾を持ち、水素爆弾をテストした。 グアムとそこのICBMを攻撃できる中距離弾道ミサイルを持ち、完全に運用可能で、 西海岸を攻撃できる可能性がある。韓国と日本を核攻撃できる短距離ミサイルを持っている。

金正恩(キム・ジョンウン)がこれらの武器を放棄するとは思えない。大国のテーブルへの入場券である。

しかし、ホワイトハウスの立場は、イランの核合意を廃止すべきだということであり、 金正恩が半島の非核化をもたらすことに合意する取引はない。

もし非核化が、金正恩が核兵器と戦略ミサイルをすべて放棄し、テストを中止し、 検査官がすべての核施設に立ち入ることを許可することを意味するのなら、我々は長い間待つかもしれない。

トランプはイランとの取引を5月12日までに決める。そして私たちは、金正恩が何を準備するか、 しないか、すぐ知ることになりそうだ。

フランスの大統領エマニュエル・マクロンは、トランプがイランとの合意を廃棄しないよう、 シリアに米軍を駐留させ続けるよう説得するために、D.C.にいる。 アンゲラ・メルケル首相が同様のメッセージを持って週末に到着する。

ホワイトハウスの優先事項では、次のオプションがある。

北朝鮮は核兵器保有を放棄することに同意するのか、それとも対立と起こるかもしれない戦争に戻るのだろうか?

我々はイランとの核合意に固執するか、破棄するか、テヘランに新たな要求を出し、 拒否されれば軍事的衝突を準備するのか?

トランプは約束通り、米軍をシリアから引き上げるのか、バシャール・アサドとロシア、 そしてイラン、ヒズボラ、シーア派の同盟国による再征服に抵抗するために、駐留させ続けるのか?

それ以上に、より大きな疑問が潜んでいる。これをどれくらい長く維持できるのか?

世界のGDPのシェアが低下しているこの国が、全世界に立ち向かって戦う約束をどのくらい 延長し続けることができるのか?

米国の飛行機と艦船は、現在、バルト海と黒海でロシアに敵対して増強されている。 我々は、キエフにジャベリン対戦車ミサイルを送っており、 一方、NATO同盟国はウクライナとグルジアを同盟入れるよう我々に懇願している。

この事は疎外され怒りを抱いている核武装ロシアと、クリミアとコーカサスで米国が戦争する保証を意味している。

9/11以降、アフガニスタンの侵略から16年経った今、まだそこにいて、タリバンに対して 私たちは敗北したと思っているアフガニスタン軍を支援している。

我々は現在シリアで、トルコとの紛争に向けて我々を引っ張るクルド同盟軍と共にISIS残党と戦っている。

米軍と顧問は、ニジェール、ジブチ、ソマリアにいる。 私たちはサウジアラビアの空の戦いと イエメンの海軍封鎖を支援している。

33,000人の米国人の命を奪った朝鮮戦争が、私が7年生に入る前の6月に始まった。 なぜ北朝鮮の40倍の経済力を持つ強力な韓国の防衛は、依然として米国の責任なのか?

私たちは、日本、フィリピン、オーストラリア、ニュージーランドを守るために、 60年目になる条約を約束している。ジミー・カーターが1979年にキャンセルした台湾への 戦争保証を更新させる声が聞こえている。

国家安全保障理事会は、南シナ海、インド洋、アラビア海の北京に対抗するため、 ベトナムとインドに新しい海軍と軍事連携を進めるよう求めている。

どのくらい長く、我々は従属国を持つ世界帝国を維持することができるのか?

今世紀の戦争、アフガニスタン、イラク、シリア、リビア、イエメンなどは、 流血と財政的損失に値すると分かったのか? そして、アメリカにの「民主主義」を推進させるために扇動してきた「カラー革命」は一体何なのか?


クリストファー・プリーブル(Christopher Preble)
カトー研究所の外交政策研究のディレクター(副社長)。 国防問題の書籍の著者。150以上の記事と政策書類。
ニューヨークタイムズ、USAトゥデー、ロサンゼルスタイムス、フィナンシャルタイムズ、 ナショナル・レビュアー、ナショナル・インタレスト、外交政策などの主要出版物にも記事を掲載しており、 テレビやラジオで頻繁に出演している。

ウォルター・リップマン(Walter Lippmann)
(1889.9.23 - 1974.12.14)
1906年にハーヴァード大学に入学し3年間で全単位を修得。1910年に最優等賞にて卒業。
第一次世界大戦中、ウッドロウ・ウィルソン大統領のアドヴァイザーを務め、 「十四か条の平和原則」の原案作成に関わる。 戦後間もない1922年に『世論』を刊行。『ニューヨーク・ワールド』紙の論説委員・編集長を務めた後、 『ニューヨーク・ヘラルド・トリビューン』紙のコラムニストになる。ピュリッツァー賞を受賞している。



ニューヨークタイムズのエッセイ「アメリカの衰亡への適応」で、クリストファー・プリーブルは 次のように書いている。「世界の富のアメリカのシェアは縮小している。 いくつかの見積もりでは、第二次世界大戦の終わりに、米国は世界の生産量の約50%を占めた ...それは今日15.1%に低下した」。

プリーブルは続ける。「米国がすべての領土紛争を効果的に裁決したり、 世界中のあらゆる安全保障上の脅威を阻止することができないことを認めても、降伏と同じではない。 アメリカの力の限界を認めることはむしろ賢明である」。

米国の約束は米国の力とバランスを取ることが不可欠である、とウォルター・リップマンは書いている。 この「忘れられた原則」は、回復され、アメリカの思想の第一歩に戻さなければならない。

それは1943年だった。私たちが準備ができていないと分かった戦争の頂点に達したのは。

私たちは今日非常に拡張し過ぎている。そして、保守派は、米国の戦争の保証を米国の重大な利益や 米国の力と一致させることを追求する以上の義務を負わない。



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トランプ候補の驚愕の演説 – グローバリスト支配層を排除せよ 2016.12.04

[訳者コメント]
トランプ候補の選挙公約は、ブキャナン氏の著作「超大国の自殺(2012.11)」に本当にそっくりである。 なお副題は「アメリカは2025年まで生き延びるか?」、原題は「Suicide of A Superpower」である。 上の関連記事に「超大国の自殺」の外交政策の要点を掲載してある。

日本に関連する記述はつぎ。

(p286)民族、人種の多様性がないことで、日本人は苦しんでるか? 1945年、瓦礫と化した日本は、 モンタナ州よりも小さく、資源も乏しいが、合衆国の1/3の経済を誇り、製造業と技術力において、 ある局面ではわれわれを凌駕していたのである。

(p485)現行の安全保障条約によれば、我が国は日本防衛の責務があるが、 日本は合衆国の防衛に参加する義務がない。…… (p486)日本は中国そのほかを食い止めるに必要な空軍、 ミサイル部隊、海軍を構築する能力を保有している。ロシアは引き続き第二次大戦の戦利品、 南千島を手離してはいないが、日本の戦略的な脅威はロシアではない。反論もあろう。

北京が日本を核攻撃で脅かすとすれば、北朝鮮ないし中国を核兵器で報復できる能力を持っているのはアメリカだけではないか。 しかしこのことは次の疑問を生む。 我々が防衛している自由主義国家が、自ら核抑止力を開発できる能力があるのに、 なぜアメリカが核戦争のリスクを背負い続けなければならないのか?