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シリア紛争

シリアの毒ガス製造施設:テロリストの能力は東部グータ(Ghouta)の化学実験室で裸にされた 2018.03.19

最終更新日:2018.04.03


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[元記事]
Terrorist capabilities laid bare in an Eastern Ghouta chemical lab
By VT - March 19, 2018
URL:https://www.veteranstoday.com/2018/03/19/terrorist-capabilities-laid-bare-in-an-eastern-ghouta-chemical-lab/

[著者]
Sharmine Narwani
中東地政学の解説者・分析家。 Columbia Universityで修士の学位を取得。様々な新聞、ウェブサイトに寄稿している。 New York Times, the Guardian, Asia Times Online, Salon.com, USA Today, The Huffington Post, Al Jazeera など。

[訳者注]
この記事は2013年12月31日に投稿されたGlobal Researchの記事関連記事[2]と、 その記事が解説している国連の最終報告書が正しかったことを裏付ける。



  © Sharmine Narwani


シリアでの化学兵器使用についての物語の戦いは、長年にわたり猛烈な怒りを巻き起こしています。 しかし、今週、東部グータ(Ghouta)で発見された化学実験室は、これまでの暴露の未解決点を変えてしまいます。

[編集者注]:サウジアラビアが資金援助した化学兵器施設で発見された機器を提供した会社は、米国の医療供給会社Hill Romでした。 それは英国に施設をもちサウジに供給しています。 下に彼らの経営陣の一部を示します。 私たちは、誰かが彼らに、機器が何に使われたかを尋ねることを強く勧めます。

  Hill Rom Management Team


昨年(2007年)12月、ワシントンDC近くの米軍航空機格納庫で、国連大使ニッキー・ヘイリーは、 イエメンの反政府勢力とイランの軍事共謀の証拠として、大きい金属パイプを展示しました。 この写真は、西半球のすべての第一面に掲載されましたが、 アメリカの舞台で展示された大きなパイプは、何も証明していないと多くの批判にかき消されました。



今週、シリア・アラブ軍(SAA)は、シフナーニエ(Shifouniyeh)とドゥマ(Douma)の間のグータ(Ghouta)東部の農地を解放し、 サウジに支援されたイスラム派テロリストの設備の整った化学実験室を発見しました。 西側の記者は施設の調査に一人も現われませんでした。


メディアの無関心は奇妙です。米国の当局者がシリアへの軍事攻撃に青信号を出しており、 民間人に対して化学兵器(CW)を使ったと、主張しているからです。 この告発は証明されておらず議論の多いところです。他のグループは、反政府武装勢力が シリアへ米軍を介入させるために化学兵器を使用していると主張しています。

おそらく、化学実験室がシリアの戦略的に重要な戦闘の真ん中で発見されたので、 一方の側で無視されるのはそれほど奇妙ではないかもしれません。 結局、シリアで誰が化学兵器を使用しているかについては片方の側だけが正しいようです。 この実験室が暴露されたときに一方の側が沈黙したのはこのためです。

化学施設は現在の最前線から数十メートルしか離れておらず、解放されたのは最近のことで月曜日です。 実験室は農地に囲まれています。この隠れ家は最後に見つかるような場所にあります。 小麦、緑色のエンドウ豆、ひよこ豆の畑が、西側メディアの言う「兵糧攻め」の紛争地域にたくさん散らばっています。 その建物そのものは、弾痕があり瓦礫で覆われています。 戦争が荒れ狂う東グータのシフナーニエ(Shifouniyeh)や他の街を通ったときに見える多くの構造物と同様です。

シリア・アラブ軍(SAA)によれば、これらの密閉容器は実験室のいくつかの区域の壁に並んでいて塩素を含んでいます。化学物質の棚と食器棚は施設の上層階に点在しています © Sharmine Narwani


しかし、内部の光景は驚異的です。上の部屋には電子装置、地下室は大型ボイラー、 化学物質で満たされた棚、青色と黒色の密閉容器(塩素を含むと報告されている)のコーナー、 化学図表、本、ビーカー、小瓶、試験管、 多くの道具は科学の平均的な学生に馴染み深いものです。 そして、いくつかのコーナーでは、パイプ状の発射体の積み重ね – 明らかに何らかの弾薬です。

施設の上部には本当に目立つものがあります。 それは新しく「Hill-Rom Medaes Medplus Air Plant」 と正面に書かれています。大急ぎでGoogle検索し、すぐに興味深い事実がいくつか浮かび上がってきました。 機械は何らかの種類の空気圧縮機で、米国製、サウジアラビアが2015年にこの機器の入札を行いました。

実験室のメインフロアにある米国製Hill-Rom空気圧縮装置 © Sharmine Narwani


壁に貼られた電話番号のリストは、この地域と実験室が、サウジに支援されたテロリストグループの ジャイシュ・アル・イスラム(Jaysh al-Islam)によって支配されていたことを裏付けます。 その政治的リーダーのモハマド・アルーシュ(Mohammad Allous)は国連主催のジュネーブ交渉に 反政府側代表として招待されました。

サウジはこの紛争で装置や武器をシリアの戦場に向けて転用したとして何度も摘発されています。 売り手は、購入品がサウジアラビアのエンドユーザーだけに使用されると想定していました。
ヒル・ロム(Hill-Rom)の圧縮機は、ほとんどの西側の科学機器と同様、 厳しい制裁法によりシリアへの販売を禁止されていたでしよう。軍事目的のために作られていないとしても、 そのような製品の多くは、二重用途の技術と米国当局にみなされています。
実験室の現場で職務を果たすシリアの職員は、施設内の関心のある分かり切った項目を指摘するだけでは不十分です。 彼らは24時間しかそこにいませんでしたが、その意図を完全に解読していませんでした。 彼らは青と黒の密閉缶を調べ、塩素を見つけました。これはシリアの戦場で少量づつ繰り返し使用されており、 国際的な非難が広がっています。

これは化学兵器実験室ですか? あるいは単に戦争で使われる物質を製造する化学実験室ですか?

この実験室で禁止された化学兵器が生産されていなくとも、その発見は化学兵器の非難ゲームを変えます。 現時点では、欧米の支援を受けた湾岸武装勢力のイスラム過激派が、 戦争中に化学物質を生産する能力を持っていることは明らかです。 この実験室は、武装勢力が外国製の装置を集め、生産ラインを作り、 入手困難な部品を調達できることを示しています。

武装勢力には化学兵器を生産する能力、調達ルート、技術力は無いと主張することは最早できません。

実験室の地下にあるボイラーは、パイプを通して床上の加圧および圧縮装置に接続されています。©Sharmine Narwani


テロリストと化学兵器

テロリストがイラクとシリアの戦争劇場で、低品質・低性能の化学兵器を使用してきた十分な証拠があります。

イラクの武装勢力が、即席爆発装置(IED)で神経ガスサリンを使用したことは、 2004年からメディアによって文書化されています。 またイラクの古い化学兵器プログラムから、失われたか盗難された物質を関連付けるCIAの詳細な記録があります。

塩素即席爆発装置も同じ年にイラクで初めて使用されました。2007年にはイラクのアルカイダ(AQI)がアンバー州などで、 自爆攻撃で塩素爆弾を使い、積極的に化学戦争を開始しました。

10年ほど話を進めます。2016年に英国の情報分析会社IHSコンフリクト・モニターは報告書を発行しました。 それは、イスラム国(イラクのアルカイダから進化)が塩素と硫黄マスタード剤を含む化学兵器を シリアとイラクで少なくとも52回使ったと言っています。

シリアでは、トラブルは2012年12月に始まりました。アルカイダ連合のアル・ヌスラ戦線(旧IS同盟)が シリア唯一の塩素製造工場を引き継ぎました。 それはアレッポの東に位置するサウジアラビアとの合弁事業です。ダマスカスは国連に直ちに次の警告を発しました。 「テロ集団は有毒な塩素工場を支配した後、シリア人に対して化学兵器を使用するかもしれない」。

ラボの投射物/爆弾の集積から、製造された物質は戦場で使用するためであることが示唆される©Sharmine Narwani


3カ月後、シリア紛争で最初で現実の化学兵器事件と見られている事件が起き、アレッポの カーン・アサル(Khan Assal)村で26人(そのうちの大半の16人はシリア兵)が殺害されたと報道されています。 翌日、シリア政府は国連にその攻撃を調査するよう要請しました。 数日後、ダマスカスの北東にあるアドラ(Adra)で化学物質事故があり、サラクェブ(Saraqeb)での攻撃が続いて報道されました。 その後8月にグータ(Ghouta)での攻撃が報道されました。その化学兵器攻撃が主な理由となり米軍の空爆を引き起こしました。 グータの地上にいたヨルダンの記者は、サウジが武装勢力に化学兵器を提供したと証言し、 一部は事故で爆発したと証言しています。

2013年5月、トルコ当局は4.5 lbのサリンガスを持つ12人のヌスラ戦線の戦闘員を捕虜にしました。 トルコのメディアはテロリストの目標について様々な報告を行っていました。 その1つは、そのグループがヌスラの本拠地のシリアに材料を持ち帰る計画をしていたというものでした。

6月には、アルカイダ細胞のメンバーがイラク当局に逮捕されました。 そのメンバーはバグダッドの2ケ所の工場を襲撃しました。 そこはサリンとマスタードガスの化学物質を研究、製造するために使われていました。 当局は、アルカイダ過激派が、致命的な化学兵器の生産に必要な前駆薬品の化学物質と調合法を持っていると語りました。

そして、など、など。話しを東部グータの実験室に戻す。

この実験室の占拠者たち、ジャイシュ・アル・イスラム(Jaysh al-Islam)は、 2016年にシェイク・マクスード(Sheikh Maqsood)の近くのアレッポのクルド人に対し、 迫撃砲攻撃で有毒物質を使ったことを公然と認めました。 「衝突の間、ジャイシュ・アル・イスラム旅団の1人が、この種の対立で禁じられていル(兵器)を使った」 と同グループは化学兵器攻撃について声明で言っています。そして加害者が責任を負うと主張しました。

この声明は一つの点で関連があります。 グループが化学兵器を所有していることを裏付けます。



誰が化学兵器で利益を得るか?

2012年中頃、シリア政府は初めて化学兵器を持っていることを認めました。 しかしこれらは「外的侵略」に対してのみ使用され、シリア人に対しては決して使用されないと述べました。

この声明は、ジャイシュ・アル・イスラムへの疑いと同じ疑いで見ることができますが、 一つ違いがあります:化学兵器はどんな形でも、政治的にも軍事的にも、 この7年間の紛争でシリア政府に決して利益をもたらしません。 それが理由で、シリア政府は一方的に化学兵器プログラムを認め、米国とロシアの監督下で喜んでそれを放棄したのです。

シリアの戦場で使用された化学兵器の量は、戦争の範囲、暴力と比べると無視できる程度です。 従来の弾薬を使ってクリーンに仕事ができるのに、なぜ数十人しか殺せない非常に 挑発的な武器を使う必要があるのでしようか?

そしてなぜ、国際社会全体の怒りを買い、さらに孤立してしまう危険を冒すのでしようか?  最も望むことは、シリアの軍事基地をたった数日で破壊できる外国軍の介入を避けることです。

シリアの紛争全体を通じて、「虐殺」や「化学攻撃」は、大部分、武装組織が挫折や膠着状態に直面しているとき、 あるいは国連安全保障理事会のような重要なイベントの期日が迫っているときに起きています。

痙攣している体や子供たちが空気を求めてあえぐ、ぞっとする場面以上に、敵を非難し、制裁し、 処罰し、爆撃するために、国際社会を駆り立てる良い機会はあるでしようか?

アル・シフナーニエの農場の化学実験室で何が見つかっても問題ではありません。 実験室の占拠者はアル・ヌスラ、ジャイシュ・アル・イスラム、ISで、そのうち2グループが現在 東部グータで軍事的に活動しており、一体誰が使ったという化学兵器パズルの最後の一コマを示しています。 彼らには常にシリアで化学戦争を起こす動機がありましたが、今では彼らが手段と能力を持っていることも分かりました。

このコラムに記載されている発言、見方、意見は、著者のものであり、必ずしもRTのそれらを 代表しているわけではありません。


[関連記事] 戻る=>page top

[1]シリア紛争 毒ガス攻撃事件 2017.04.10

[2]シリア:国連派遣団の報告書は、反政府勢力が化学兵器を民間人や政府軍に対して使用したことを確認した 2013.12.31