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イスラエル、サウジアラビアはヒズボラとの戦争の前提条件を設定する2017.11.17

最終更新日:2018.07.14


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[元記事]
Israel, Saudi Arabia Setting Preconditions for War with Hezbollah
The Saker November 17, 2017
URL:https://www.unz.com/tsaker/israel-saudi-arabia-setting-preconditions-for-war-with-hezbollah/

[著者]
The Saker
元軍事アナリスト。ヨーロッパでロシア難民の家族に生まれた。現在はフロリダに住み、 Sakerブログを書いており、Unz Review、Russia Insiderに定期的に寄稿している。
(The Sakerの詳しい紹介記事はない)。


サウスフロントは、非常に興味深いビデオ分析の警告を出した。 それはレバノン、サウジアラビア、そして多分シリア、イラン、イスラエルを巻き込む戦争の可能性についてである。 もちろん、ロシアと米国が関与することを意味する。まず、以下のビデオをご覧ください:

[YouTube動画] Israel, Saudi Arabia Setting Preconditions For War With Hezbollah

私が提案するのは、そのようなシナリオの意味を説明することである。

筋書:全戦線でのアングロ・シオニストの全面的失敗

これらの進展の背景を理解するためには、ここ数年シリアと中東の他の地域で 何が起こったのかを手早く要約する必要がある。

アングロ・シオニストの最初の計画は、アサドを転覆させ、 彼をタクフィリ(Takfiri)のキチガイ(Daesh、Al-Qaeda、Al-Nusra、ISIS)で置き換えることだった。 これを行うことで、次の目標を達成できる:

1.強力な世俗的アラブ国家をその政治的構造、軍隊、治安部隊と一緒に打倒する。
2.ゴラン高原だけでなく、さらに北方に「安全保障区域」を作ることを正当化するシリアの 全面的な混乱と恐怖を作り出す。
3.レバノンで内戦を起こし、タクフィリ(Takfiri)のキチガイをヒズボラに解き放つ。
4.タフフィリとヒズボラが血を流して互いに死んでもらい、レバノンに「安全保障区域」を作る。
5.イラン-イラク-シリア-レバノンのシーア派枢軸の創立を防ぐ。
6.シリアを民族的、宗教的な線に沿って分割する。
7.トルコ、シリア、イラク、イランに対して使用できるクルディスタン地域を作る。
8.イスラエルが中東で最強の権力仲介人になれるようにし、サウジアラビア、カタール、 オマーン、クウェート、そして他のすべての国に、ガスや石油パイプライン・プロジェクト のためにイスラエルに伺いを立てるよう強制する。
9.広範な地域連合軍と共に徐々にイランを孤立させ、脅威を与え、破壊し、最終的にイランに攻撃する。
10.中東におけるシーア派全ての拠点を除去する。


それは野心的な計画だったが、イスラエルは臣下の米国が それを達成するのに必要な資源を提供すると確信していた。 そして今、ロシア、イラン、シリア、そしてヒズボラの間の非公式だがしかし 強力な同盟の高い有効性のために計画全体が崩壊した。

イスラエルが激怒し、全面的なパニック状態に陥っていると言っても過言ではない。 あなたは私が誇張していると思いますか? イスラエルの視点から見ると:

1.シリア国家は生き延びており、軍隊と治安部隊は、戦争が始まる以前よりもはるかに能力がある (最初の頃、ほとんど戦争に負けそうだったことを覚えていますか?  シリアは立ち直り、非常に厳しいレッスンを学んだ。彼らが驚くべき進歩を遂げたという全ての報告書や、 危機的瞬間にイランとヒズボラは文字通りシリア最前線で「穴を塞ぎ」、地域の発火点で「消火」をしていたが、 今やシリアは彼らの国の大きな領域とシリア全土の都市を解放するという非常に良い仕事をしている)。
2.シリアは強くなっただけでなく、今やイラン人とヒズボラが全土におり、イスラエルをパニックと怒りの国へ追いやっている。
3.レバノンは盤石である。最近サウジアラビアがハリーリ(レバノン首相)を誘拐しようとした企てでさえ逆効果になっている。
4.シリアは統一された残り、クルディスタン化は起きていない。何百万人もの難民が故郷に戻っている。
5.イスラエルと米国は全面的に馬鹿者のように見える。さらに悪いことに、信用できない敗者が残っている。


これは、アングロ・シオニストにとっては全て災害で、抵抗に出会ったときの典型的な態度に後退している: 我々がそれを制御できないときは、破壊しよう。

計画:米国にイランを攻撃させる

以下は単に私の推測であり、それ以上ではない。 私は親切な枢軸(米国 - イスラエル - サウジアラビア)が何を思い付いたのか知らないが、 知識に基づく推測をすることができる。 一つは、新しいことではない。サウジアラビアと他の湾岸諸国は、過去にシリアに介入すると騒ぎ立て、 サウジアラビアがバーレーンとイエメンに介入したことを知っている。 イスラエルについては、(完全に違法な)軍事介入の記録は非常に長いので、 イスラエルがその地域を荒廃させる醜悪な悪の計画に関与したことは間違いない。 サウジアラビアとイスラエルの主要問題は、未熟な軍隊を持っていることである。
高価 – そうです。 ハイテク – そうです。

しかし彼らの問題は、ただ一つの真の専門分野は無防備な民間人の大虐殺であり、彼らはそれの実際の専門家である。 しかし、実際の戦争、特にイランやヒズボラのような本当に恐ろしい敵に対して、 「シオワッハーブ主義者」[注](なんという組み合わせ)は見込みがなく、彼らはそれを知っている。 それがいかにフラストレーションのたまるものか想像してください:あなたは基本的に属国となった米国を支配する。 あなたは何十億ドルも費やして肥大した軍隊を装備し訓練する。しかし結局のところシーア派はただ笑っている。 そしてあなたは何らかの理由で理解できない。 毎回、「彼らにレッスンを与え」ようとするが、全面的に恥をかき傷をなめ、 敗北の大きさを闇に葬ろうと這って故郷に戻るのはあなたである。 それはひどく傷つける。だからシーア派にそれを支払わせる計画が策定される必要があった。 ここに私が考えるものがある。

[注]シオワッハーブ主義者;イスラエルのシオニストとサウジアラビアのワッハーブ主義者を組みあわせた造語。

第1に、目標はどこにおいてもヒズボラやイランを倒すことではない。イスラエルは、人種差別の言い方と傲慢さにもかかわらず、 サウジアラビアはイランやヒズボラを真剣に脅かすことはないと知っている。 しかし、彼らの計画は、大変に露骨である:それは深刻な紛争を引き起こし、米国に介入させようとする。

私は、米軍がイランとの戦争で勝つ手段を持っていないことを説明する多くの記事を書いている。 そして、それがここで問題になるかもしれない:米国の指揮官はそれを十分に知っている。 したがって、彼らはネオコンに「できない、大変申し訳ない!」と言うために何でもする (それがイランに対する米国の攻撃がまだ起きていない唯一の理由である)。 イスラエルの観点からすれば、これは全く受け入れられず、解決策は単純である: 米軍が望まない戦争の米国を追い込む。結局のところ、米国のゴイムが何人死ぬか、誰が気にするだろうか?

イランについては、イスラエルが引き起こす米国のイラン攻撃の目標は、イランを倒すことではなく、 ひどく傷つけることだ。それが本当の目標である。 イスラエルが関わっている限り、支配民族が恩恵を受ける間は、非ユダヤ人がどれだけ死んでいくのかは気にしない (ユダヤ人の倫理は、非ユダヤ人のすべてがおそらく死に値すると教える)。 簡単に言えば、我々は道具にすぎない、思考可能なツールだが、道具以外の何者でもない。 それはもちろんネオコンが我々をどのように見ているかと言うことだ。 実際、シーア派とスンニ派のイスラム教徒がお互いを殺しあっているのを見るイスラエル人の喜びを、私は想像できる。 少数のキリスト教徒を放り込むのはさらに良い。

だから全てが単純である:サウジアラビアにレバノンやイランを攻撃させ、どのように負けるかを観察し、 プロパガンダ・マシンをフルパワーで稼働させ、平均的なTV視聴者にイランがこの地域にとっての脅威であり、 侵略者であり、サウジアラビアはイランの侵略から自分たちを守っているだけだと説明する。 それだけでは不十分ならば、米国議会で「おお神よ!」と叫び、連邦議事堂の売春婦に、 米国は「自由な世界を主導」しなければならない、イランの「侵略」に対して中東で「唯一の民主主義国」を 「防衛」しなければならないと説明させる。 そして米国はイランが「サウジアラビアの油田を奪う」のを阻止する「責任」がある、などなど。

これは、現行犯で捕まらない限り、イスラエルにとっては、ウィン-ウィンの状況である。 しかし、たとえイスラエルの指紋があちこちにあったとしても、我々の愛するシオメディアは、 「反ユダヤ主義」の告発が起きないようにするために頼りにできる。

アラバマの月(オープンフォーラム)は、「暴露 - パレスチナを放棄するサウジアラビアの計画 – イランとの戦争のため」と題した興味深い記事を掲載した。 それは私には最もらしく思え、目標が米国にイランを攻撃させることがという私の説の確信をさらに強めた。 もちろん、サウジアラビアがパレスチナを放棄する可能性があるという考えは、2つの全く奇妙な考えを暗示している。 第1に、サウジアラビアはまだ何度もパレスチナを裏切っていない、 そして第2にサウジアラビアはどうにかしてパレスチナをイスラエルに「引き渡す」ことができるだろう。 それでも私はこの記事を読むことをお勧めします。 それはサウジアラビア政権の本性と意図についての非常に興味深い暴露を多く含んでいる。

イスラエルについては、サウジアラビアと諜報機関を共有することを提案している。 これらの2つの中世的な、後ろ向きの、一般的には悪の政権を見ることは、いかに人の心を動かすものか。 少なくともそれらは今、本当の、醜い顔を見せている!

対抗策

イランには本当にいい選択肢がない。 最も悪くない選択肢は、プーチンがドンバスでやっていることをやることだ:極端に受け身で対応するに留める。 但し、それほど才覚のない人があ屈服したと言って非難する危険がある。 敵の計画が勝つことでなく負けることならば、交戦を拒否することは、少なくとも戦略的レベルで、 そして一時的には完全に有意義である。

私はイランが戦術的レベルで反撃しないとは言っていない。 シリアのロシアの特別部隊でさえ、攻撃されれば自衛する公式の命令を受けている。私は戦略的なレベルで話している。 基本的には、したいと思うだろうが、イランはサウジアラビアやそれ自体に反撃することを控える必要がある。 逆説的な方法で、イランは2006年にヒズボラがやったことをできない。 その理由は非常に簡単である:最初のヒズボラのミサイルがイスラエルに降り始めたときまでに、 イスラエルはすでに最高レベルのエスカレーションに達していた(民間人に犠牲を強いる彼らの通常の悪意に満ちた軍事行動)。

しかしイランの場合、アングロ・シオニズム帝国は、イスラエルとサウジアラビア自身が できるレベル以上に、暴力のレベルを引き上げることができる。 イスラエルとサウジアラビアを合わせた力は、米国(中央軍 + NATO)がイランに対して使う火力より小さいから、 イランにとって米国が公式に攻撃に参加する口実を与えないことが重要である。 イランはリヤドの政権を破壊する代わりに、リヤド政権が自己破壊するように仕向けるべきである。 サウジアラビアには米国やイスラエルほど力がないので、 イランとサウジアラビアの戦争で早急な結果を無理に求める必要はないと私は考えている。

言うまでもなく、アングロ・シオニスト帝国(米国)が参戦し、イランに対して全面的に軍事力を解き放つと、 私はそれが本当に現実の可能性が高いと考えているのだが、 全ては帳消しになりイランは対称/非対称戦フルセットの反撃で報復しなければならない。 それはイスラエルとサウジアラビアに対する攻撃、さらには全地域の米中央軍拠点に対する攻撃を含む。 しかしこのような状況はイランにとって致命的な結果につながるため、できる限り避けるべきである。

結局、世界の最善の希望は、米国の愛国者が注意を反らせようとする明白な陰謀を見透かし、 シオワッハーブ主義者に2007年にファロン司令官[注]が言ったように「私の勤務中にはない」と伝えることである (その名誉ある男は、彼が受けるに値する歴史的な認知を得るでしょう。ノーベル平和賞? この世では決してないかもしれないが、神の裁きでは、彼は当然「神の子」と呼ばれるだろう(マタイ5:9))。 イスラエルとサウジアラビアは、それ自身、ヒズボラが脅かし逃げ出させる中世の凶悪犯ギャングである。 彼らの唯一の真の力は、議会と米国のシオメディアにおける権力である:腐敗した権力、嘘を言い、騙し、裏切る能力。 米軍の全階級の多くの米国将校がこれらシオニストの煙幕を通してまっすぐ見て、 彼らの忠誠心は合衆国に対するもので、パレスチナにおける汚らわしいシオニスト勢力に 対してではないという事実を私は知っている。
[注]参照 => 米中央軍司令官ファロン:イラン攻撃は私の時計で起こらない 2007.05.16

私はそのような愛国者と学び、協力してきたし、今日、Sakerコミュニティにたくさんある。 私は、トップの米軍指揮官が大統領令の執行を拒否することを頼りにすべきであると言っているわけではない。 事実は、軍隊に勤めた誰でも、特に高い指揮レベル(国防総省、中央軍)は、 何かが起こらないことを確実にするあらゆる種類の独創的な方法があることを知っている。 最後に、私はトランプが正しいことをできるという全ての希望を失ったわけではない。 彼は弱い立場で曲がり角におり、協力者はいない。しかしイランに対する攻撃の恐ろしい結果に直面したとき、 彼はまだ「ノー」と言うかもしれないし、スタッフに他の計画を考えるよう命令するかもしれない。 トランプはまた、イランとの戦争を拒否すると、彼を中傷した人、そして明白に 彼を弾劾しようとしている人たちに対する最高の復讐となることを認識するかもしれない。

結論:攻撃は起こるだろうか?

要するに、多分イエス。単純な真実は、イスラエルとサウジアラビアの頭のおかしい政権が窮地に追い込まれ、 絶望的になっていることである。 過去10年間のイランの権力の増大は、巨大で抵抗しがたいものだった。 最近、シオワッハーブ主義者が小さなカタール支配でさえも失敗したことは、 これらの頭のいかれた政権が権力と信頼性にの点で著しく崩壊していることを示している。 ビビ・ネタニヤフとサウジ王が最近、モスクワを訪れたのは、イランへの攻撃に対するロシアの対応を測るための シオワッハーブ側の努力の一部であったと私は信じている。

補足:閉じた扉の中で何が言われたかわからないが、私の推測では、 プーチンはロシアが脇によけないし、イランを攻撃させないと明確な言葉でシオワッハーブ主義者に示したはずだ。 実際、ロシアは非常に限られた選択肢しか持っていない。 ロシアの人員が直接的に攻撃されない限り、ロシアは公然と公式には戦争できない。それはあまりにも危険である。 しかし、ロシアは大規模にそして早急に航空機(A-50、MiG-31s)をイランに配備したり、 ロシアから偵察飛行をさせて、イランの防空能力を大幅に強化することができる。 ロシアは、イランが自ら集められる情報を遥かに超える情報をイランに提供することができる。 同様に、ロシアは電子戦システムを音もなくイランの重要な場所に配備することができる。 アメリカ人はこれをすばやく発見するが、ロシアは依然として政治レベルで「もっともらしい否認」を言える。 最後に、ロシアはシリアで行ったことをイランのためにできる。 そしてイランとロシアの防空能力を単一ネットワークに統合して、 現在は控えめだが急速に改善中のイランの防空能力を大幅に向上できる。

現時点では、イランへの攻撃が準備されており、そのような攻撃が起こりそうなのはかなり明白である。 しかしそれはまだ完了していない。 サウジアラビアとイスラエルは空虚な脅迫の長い歴史を持っており、両政権は気取った態度と派手な行為を愛している。 そして彼らの虚勢にもかかわらず、イランが恐るべき非常に強力な敵であることを実感している。 イランが最も弱っていた時、イラクが、米国、ソ連、フランス、英国からの全面的支援を得て、 イランを攻撃した出来事を覚えていると思う。 長いひどい戦争の後に、イランは今やかってないほど強力で、サダムは死亡し、 イランは多かれ少なかれイラクを支配している。 イランは、単に「勝利」が何を意味するのか明確なビジョンを持たないので、攻撃に向いた国ではない。 だからイランを攻撃するのはキチガイのはずである。 問題は、もちろん、サウジアラビアとイスラエルがキチガイだと言うことである。何度も何度もそれが証明されている。 だから我々の最高の希望は、彼らは 「キチガイ」かもしれないが、「何も聞かないキチガイ」ではないということである。 希望と言うほどではないが、それが我々が得られる最高のものである。


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[1] プーチンは本当にイランを「見捨てる」準備ができているか? サーカー 2018.06.07
[2] ヒズボラはイスラエルをどのように敗北させたか 2006.10.13
[3] 米中央軍司令官ファロン:イラン攻撃は私の時計で起こらない 2007.05.16